太陽光発電で余った電気はどうなる?売電と自家消費の違い

太陽光発電で発電した電気の流れ

太陽光発電システムは、昼間に太陽の光を電気に変換します。発電した電気はまず家庭内の電力消費に使われ、それでも余った場合は電力会社に送られます。

この仕組みは自動的に制御されており、家庭側で特別な操作を行う必要はありません。

電気の流れを簡単に整理すると

  1. 太陽光パネルが太陽の光を受けて発電する

  2. 発電した直流電気をパワーコンディショナが交流に変換

  3. 家庭内の照明や家電に優先的に使用

  4. 使い切れず余った分は電力会社へ自動的に送電される

この仕組みによって、発電電力を無駄なく活かすことができます。家庭で使う電気を優先し、余剰電力は自動的に売る、というのが基本構造です。

売電とは?国の制度に基づく仕組み

太陽光発電によって生まれた電気を電力会社に売ることを売電と言います。売電には、国が定める固定価格買取制度(FIT)が関係しています。

FIT制度の概要

FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、固定価格で電力会社が買い取る仕組みです。
この制度により、一般家庭でも発電した電気を収益化できるようになりました。

売電のルール

  • 電力会社が国で定められた価格で電気を買い取る

  • 家庭用(10キロワット未満)は余剰電力買取方式

  • 買取期間は10年間

  • 買取単価は設置年度で固定される

2025年時点では、住宅用太陽光の売電単価は1キロワット時あたりおよそ16円前後です。
FIT制度が始まった2012年当時は42円という高価格でしたが、導入コストの低下とともに単価も下がってきています。

売電のメリット

  1. 使わない電気を収益に変えられる

  2. FIT制度により10年間は価格が固定され、安定した収入を得られる

  3. 電気代全体の支出を減らせる

売電のデメリット

  1. FIT期間が終了すると買取価格が大幅に下がる

  2. 自家消費の方が経済的に有利なケースが増えている

  3. 買取期間が終わると契約更新手続きが必要

自家消費とは?家庭内で使う電気の活かし方

自家消費とは、太陽光で発電した電気をそのまま家庭内で使用することを指します。
電力会社から買う電気を減らせるため、電気代を直接削減できます。

自家消費のメリット

  • 電気代の節約につながる

  • 売電単価よりも買電単価の方が高いため、使う方が得になる

  • 停電時にも発電電力を利用できる(蓄電池があれば夜間も使用可能)

  • 環境負荷の少ない暮らしが実現できる

自家消費のデメリット

  • 昼間に家を留守にしていると発電した電気を使い切れない

  • 蓄電池を設置しないと夜間の電気使用に活かせない

  • 発電量と消費量のバランスを取る必要がある

太陽光発電の経済性を高めるには、自家消費率を上げる工夫が重要です。
そのためには蓄電池やHEMS(家庭用エネルギーマネジメントシステム)の導入が効果的です。

売電と自家消費の違いと収益性比較

かつては「売電によって利益を得る」ことが主流でしたが、現在では電気料金の上昇により「自家消費の方が得」な傾向が強まっています。

売電と自家消費の比較表

比較項目 売電 自家消費
主な目的 余剰電力を販売して収益を得る 発電電力を使って電気代を節約する
価格の目安 約16円(1kWhあたり) 節約効果 約30円(買電単価換算)
メリット 安定した収益を得られる 節約効果が高い 停電時も安心
デメリット FIT終了後は単価下落 昼間に家を使わないと効果が薄い
おすすめの家庭 初期導入期 蓄電池や電気自動車を併用する家庭

電気料金の高騰を考慮すると、今は「使って節約する方が価値が高い」状況です。
そのため、これからの時代は売電と自家消費をうまく組み合わせるハイブリッド運用が主流になります。

自家消費率を高める具体的な方法

1. 蓄電池の導入

昼間に発電した電気を蓄電池にため、夜に使うことで自家消費率を上げられます。
容量6キロワット時から10キロワット時程度の蓄電池を導入すれば、一晩分の電気をまかなえることも可能です。
停電時にも使用できるため、災害対策としても価値があります。

2. 電気使用を昼間に集中させる

洗濯機や食洗機など、動作時間をタイマー設定できる家電を昼間に運転するようにすれば、発電電力を効率的に利用できます。
家事のタイミングを発電時間帯に合わせることが節約の第一歩です。

3. HEMSを活用してエネルギー管理

HEMSを導入すれば、家の中でどの機器がどれだけ電気を使っているかを把握できます。
リアルタイムでデータを見ながら無駄を減らし、発電と消費のバランスを最適化できます。

4. 電気自動車との連携

電気自動車を蓄電池として活用するV2Hシステムを導入すれば、昼間に充電し夜に家庭で使用することも可能です。
車と家の電力を連動させることで、より柔軟な自家消費運用が実現します。

卒FIT後のおすすめ運用

FIT制度の買取期間(10年間)が終了すると、売電単価はおよそ8円前後に下がります。
この時点では、売るよりも使う方が圧倒的にお得です。

卒FIT後の運用アイデア

  • 蓄電池を導入して発電電力を家庭で最大限活用する

  • 電力会社の再エネ買取プランを選び、有利な条件で売電する

  • 地域のマイクログリッド(電力の地産地消ネットワーク)に参加する

さらに、多くの自治体では蓄電池導入や再エネ利用に関する補助金制度も設けられています。
補助制度を活用すれば、初期費用を大幅に削減することも可能です。

まとめ

太陽光発電で余った電気は、自宅で使うか、電力会社に売るかの二択です。
これまでの主流は売電による収益化でしたが、現在は電気代の上昇とFIT終了により、自家消費中心の考え方が主流に移りつつあります。

まとめると次の通りです。

  • 売電は収益、自家消費は節約につながる

  • 2025年以降は「使う方が得」な時代へ移行

  • 蓄電池やHEMSの導入で自家消費率を高めることがポイント

太陽光発電は、発電するだけでなく「どう活かすか」が重要です。
発電した電気を自分の生活に合わせて上手に使うことで、より大きな経済的メリットと安心を得ることができます。

太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の仕組みとは?

1. FIT(固定価格買取制度)とは

FITとは「Feed-in Tariff」の略で、再生可能エネルギーで発電した電力を、国が定めた価格で電力会社が一定期間買い取ることを義務づけた制度です。
この制度は、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなど再エネ普及を促進する目的で2012年に導入されました。

制度の目的

FIT制度の目的は主に以下の3点です。

  • 再生可能エネルギー導入を加速させる

  • 発電事業者の採算を安定させる

  • 国内のエネルギー自給率を高め、環境負荷を軽減する

特に太陽光発電は、一般家庭でも導入しやすく、FIT制度によって大きく普及が進みました。

制度の仕組み

  1. 太陽光発電を設置した家庭や企業が発電した電力のうち、使いきれない余剰分を電力会社に売る

  2. 電力会社は、国が定めた固定価格で一定期間買い取る

  3. その費用は「再エネ賦課金」として全国の電気利用者が負担

このように、FIT制度は社会全体で再エネ導入を支援する仕組みといえます。

2. FIT制度の歴史と発展

導入の経緯

日本では2009年に「余剰電力買取制度」が始まり、主に家庭用太陽光を対象にした制度でした。
2012年7月に「再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)」が施行され、売電対象が全量買取に拡大。事業用太陽光発電の普及も一気に進みました。

買取価格の推移

制度初期(2012年頃)は、住宅用(10kW未満)で1kWhあたり42円という高い買取価格でした。
その後、太陽光パネルの価格下落と普及拡大を受けて、段階的に下がり、2025年度では住宅用で16円前後が目安となっています。

年度 住宅用(10kW未満) 事業用(10kW以上)
2012年 42円 40円
2015年 33円 29円
2020年 21円 13円
2023年 17円 11円
2025年(予測) 約16円 約10円

このようにFIT価格は年々減少傾向にありますが、発電コストの低下や蓄電池の普及により「自家消費型」へのシフトが進んでいます。

3. FIT制度の期間と対象

買取期間

FIT制度の買取期間は、発電容量によって異なります。

  • 住宅用(10kW未満):10年間

  • 事業用(10kW以上):20年間

契約期間中は、設置した年の買取価格が固定され、途中で価格が変わることはありません。

対象となる発電設備

FITの対象は、一定の条件を満たす再エネ設備です。太陽光発電では以下の要件があります。

  • 経済産業省への設備認定を受けていること

  • 電力会社と接続契約を結んでいること

  • 国の定める安全・品質基準を満たしていること

また、家庭用と事業用では制度上の扱いが異なり、家庭用は「余剰電力買取」、事業用は「全量買取」となります。

4. FIT終了後はどうなる?

「卒FIT」後の選択肢

FIT期間が終了した発電設備は「卒FIT」と呼ばれます。
卒FIT後も、発電した電力は引き続き売ることが可能ですが、価格はFIT時代より低く(およそ8円/kWh前後)なっています。

卒FIT後の選択肢は以下の通りです。

  1. 新しい買取プラン(自由買取)に切り替える

  2. 蓄電池を導入して「自家消費」メインに切り替える

  3. 電気自動車(EV)と連携して電力を賢く利用する

特に最近は、売電よりも「自宅で使う」方が経済的メリットが大きくなっており、自家消費+蓄電池活用が主流です。

FITからFIP制度へ

2022年以降は、FITに加えて新たに「FIP制度(フィードインプレミアム)」が導入されました。
これは、発電事業者が市場価格で電気を売る際に、一定のプレミアム(上乗せ金)をもらえる仕組みです。
FITが“固定価格”だったのに対し、FIPは“市場連動型”で、より自立した電力取引を促しています。

制度 特徴 対象
FIT 固定価格で電力会社が買い取る 家庭・小規模発電向け
FIP 市場価格+プレミアムで販売 事業用・大規模発電向け

今後はFITからFIPへの移行が進み、発電者がより自由に電力を販売する時代へ移り変わると考えられています。

5. FIT制度を利用するメリットとデメリット

メリット

  1. 導入費用の回収がしやすい
     一定期間、安定した売電収入が見込めるため、初期投資を回収しやすくなります。

  2. 導入リスクが低い
     価格が固定されているため、電気の市場変動の影響を受けにくい。

  3. 環境貢献の実感
     再エネ普及を通じて、CO2削減・地球温暖化対策に寄与できます。

デメリット

  1. 買取価格の低下
     導入当初よりも年々価格が下がっており、今後は「売って儲ける」よりも「使って節約する」方向にシフト。

  2. 期間が限定されている
     10年または20年で終了するため、長期的に考えると新しい仕組み(FIPや自家消費)への切り替えが必要。

  3. 再エネ賦課金の負担増
     制度維持のための費用が電気料金に上乗せされており、全国民で負担している。

6. FIT制度の今後と2025年以降の動向

2025年以降は、FITによる高額買取がさらに縮小し、自家消費型・FIP型へ本格的に移行していきます。
経済産業省も「再エネ主力電源化」を掲げており、FITは“普及を終えた技術”として次のステージに入ったといえます。

今後の方向性

  • 太陽光+蓄電池+EVの連携が主流に

  • 地域マイクログリッド(分散型電力網)の拡大

  • 自家消費率を上げるためのAI制御・HEMS活用

つまり、これからの太陽光発電は「売る時代」から「使う時代」へと完全に移行します。
FIT制度はその橋渡しを担った非常に重要な政策であり、制度を理解することは今後の再エネライフ設計にも役立ちます。

まとめ

FIT(固定価格買取制度)は、太陽光発電の普及に大きく貢献した国の支援制度であり、導入した家庭や企業が安心して再エネを始められる仕組みでした。
現在は買取価格が下がりつつありますが、制度を活用すれば10年間の安定した売電収入が見込め、費用回収の大きな支えとなります。

これから導入を考えている方は、

  • FIT適用期間と買取価格を確認する

  • 卒FIT後の自家消費・蓄電池運用も見据える

  • 信頼できる業者に一括見積もりを依頼する
    この3つのステップを意識しましょう。

再エネはもはや一部の家庭だけのものではなく、全国的な生活インフラになりつつあります。
制度の理解を深め、賢く活用することで、あなたの家庭にも経済的・環境的なメリットが生まれるはずです。