太陽光発電で電気代はいくら節約できる?シミュレーション事例

本記事の読み方(先に結論)

  • 太陽光だけでも、日中在宅の家庭なら**電気代を20〜40%**削減しやすい

  • 太陽光+蓄電池(10kWh前後)なら**30〜60%**削減が狙える(自家消費率向上がカギ)

  • オール電化・電気自動車(EV)充電と相性抜群。夜間活用の設計次第で効果が跳ね上がる

  • 回収目安は8〜12年。補助金・高騰する電気料金・売電単価低下を踏まえ、自家消費重視がベター

以下、前提条件→家族別ケース→プラン別比較→季節変動→投資回収まで、順を追って丁寧に見ていきます。

シミュレーション前提と用語の超要約

数値は「傾向を理解するための代表値」です。お住まい、屋根、プラン、使用状況で変動します。

  • 電気料金:平均単価(燃調・再エネ賦課金含む)を30円/kWh(日中実効35円/kWh、夜間25円/kWh)で概算

  • 売電単価(余剰):15円/kWh(住宅FITの代表的な水準を想定)

  • 太陽光の年平均発電量:1kWあたり1,100kWh/年(関東〜関西の中庸値)

  • 代表機器:太陽光5kW7kW10kW、蓄電池10kWh

  • 自家消費率(太陽光のみ):30〜50%、蓄電池あり:50〜80%

  • 用語メモ

    • 自家消費:発電した電気を家でそのまま使うこと

    • 余剰売電:使いきれなかった分を電力会社に売ること

    • 稼働率・損失:季節差・機器損失(パワコン等)をざっくり内包

式の基本形
年間節約額 =(自家消費量 × 家庭の買電単価)+(売電量 × 売電単価)

ケースA:共働き・3人家族(昼間ほぼ不在)× 太陽光5kW

  • 年間使用電力量:4,200kWh(350kWh/月)

  • 太陽光発電:5kW × 1,100=5,500kWh/年

  • 自家消費率(昼間不在が多い):35%想定 → 自家消費1,925kWh、売電3,575kWh

節約額(年)

  • 自家消費分:1,925kWh × 30円 = 57,750円

  • 売電分:3,575kWh × 15円 = 53,625円

  • 合計:111,375円 ≒ 9,280円/月

ポイント

  • 昼間不在でも「冷蔵庫・待機電力・タイマー洗濯・食洗機の昼稼働」で自家消費率を底上げ可能

  • 売電で下支えされるが、蓄電池を入れると効果がさらに安定

ケースB:共働き・子ども2人(夕方〜夜ピーク)× 太陽光7kW+蓄電池10kWh

  • 年間使用電力量:5,400kWh(450kWh/月)

  • 太陽光発電:7kW × 1,100=7,700kWh/年

  • 蓄電池で自家消費率を65%に向上 → 自家消費5,005kWh、売電2,695kWh

節約額(年)

  • 自家消費:5,005kWh ×(昼夜平均単価30円のままでも)= 150,150円

    • 実際は「昼の高単価を避け夜間活用」なので、実効効果は160,000円超になることが多い

  • 売電:2,695kWh × 15円 = 40,425円

  • 合計:約200,000円/年(≒16,700円/月)

ポイント

  • 夕〜夜のピークを蓄電池でカバーし、買電ピークを削る設計が効く

  • 食洗機・洗濯乾燥・風呂給湯などの負荷シフトがカギ

ケースC:5人家族・オール電化(給湯・調理が電気)× 太陽光10kW+蓄電池10kWh

  • 年間使用電力量:7,800kWh(650kWh/月)

  • 太陽光発電:10kW × 1,100=11,000kWh/年

  • 自家消費率:70%(昼〜夜を蓄電でブリッジ)→ 自家消費7,700kWh、売電3,300kWh

節約額(年)

  • 自家消費:7,700kWh × 30円 = 231,000円

    • オール電化は昼夜単価差や季節差が大きいので、実効で25〜35万円に振れる

  • 売電:3,300kWh × 15円 = 49,500円

  • 合計:約28〜30万円/年(≒23,000〜25,000円/月)

ポイント

  • 太陽光10kWは屋根条件が前提。ヒートポンプ給湯(エコキュート)やEV充電との連携が効率的

  • 冬季の給湯負荷対策に、昼間の沸き上げを設計へ組み込むと自家消費率UP

ケースD:テレワーク多め・ペットあり(昼間在宅)× 太陽光5kW+蓄電池なし

  • 年間使用電力量:4,800kWh(400kWh/月)

  • 太陽光発電:5,500kWh/年(5kW)

  • 自家消費率:50%(在宅+空調+PC)→ 自家消費2,750kWh、売電2,750kWh

節約額(年)

  • 自家消費:2,750kWh × 30円 = 82,500円

  • 売電:2,750kWh × 15円 = 41,250円

  • 合計:123,750円/年(≒10,300円/月)

ポイント

  • 在宅はエアコン・空調・電子機器の昼利用で自家消費が伸びる

  • まずは太陽光のみでも効果を実感しやすいプロファイル

電気料金プラン別の「効き方」の違い

1)従量電灯(単価フラット)

  • 日中も夜も単価差が小さい

  • 太陽光のみでも「昼の買電を置き換え」やすく、わかりやすい節約

2)時間帯別(夜間安い)

  • 売電単価<昼の買電単価が一般的

  • 昼の自家消費価値が相対的に高い。蓄電池で「昼→夜」スライドの価値は料金差に依存

3)季節別変動・燃調高いとき

  • 電気料金上昇局面では自家消費の価値が上がる

  • 将来の値上げリスクヘッジとして自家消費戦略が合理的

太陽光だけ vs 太陽光+蓄電池の差(概念図 verbal)

  • 太陽光のみ:昼に山型、夜は買電。余剰は売電

  • 太陽光+蓄電池:昼の余剰を貯め、夜の買電を相殺。自家消費率が跳ね上がる

  • 売電単価が下がる一方、買電単価の高止まりが続くほど、蓄電の価値が増す

季節変動・地域差の注意

  • 発電は春〜初夏が好調。夏は高温でパネル効率が下がることも

  • 冬は日照短く発電減。暖房・給湯の負荷増で自家消費の価値はむしろ上がる

  • 地域差:1kWあたり年900〜1,300kWh程度のレンジで変動。屋根方位・影・勾配が重要

EV(電気自動車)充電と組み合わせた伸びしろ

  • 昼間太陽光→日中在宅充電で自家消費率がさらに上がる

  • 夜間充電は安い時間帯を狙う。蓄電池経由のMIXができるとピークカットに有効

  • 走行1,000km/月前後なら、電気代とガソリン代差でトータル節約が顕著に

光熱費だけじゃない副次効果

  • 停電時の安心(非常用回路・全負荷型の違いを要確認)

  • CO₂削減・環境教育・資産価値向上(屋根・外観との調和設計が大切)

  • HEMSによる見える化で節電意識が定着

導入費用と回収イメージ(ざっくり版)

  • 太陽光5kW:130〜150万円/年削減10〜13万円 → 回収10〜12年

  • 太陽光7kW+蓄電池10kWh:280〜330万円/年削減18〜22万円 → 回収12〜15年

  • 太陽光10kW+蓄電池10kWh(オール電化):350〜420万円/年削減25〜30万円 → 回収12〜14年
    ※ 補助金(自治体・蓄電池)で**−10〜150万円**程度の軽減も。屋根や配線条件で増減

「わが家はどれくらい下がる?」5分でざっくり計算

  1. 年間使用量(kWh)を明細で確認

  2. 太陽光容量(kW)×1,100=年間発電量を概算

  3. 自家消費率を見積もり(太陽光のみ30〜50%、+蓄電池50〜80%)

  4. 節約額=(自家消費量×買電単価)+(売電量×売電単価)

  5. 月割りし、ローン返済(ある場合)と差し引きで実質の月次インパクトを見る

例:年間5,400kWh・7kW・蓄電池あり・自家消費65%

  • 発電7,700kWh → 自家消費5,005kWh、売電2,695kWh

  • 買電30円、売電15円 → 年約200,000円の削減

  • ローン月15,000円なら、電気代削減(約16,700円)で相殺に近い設計も可

よくある疑問Q&A

Q1:共働きで昼不在。蓄電池なしでも入れる意味ある?
A:あります。待機負荷や昼のタイマー運転で自家消費化。売電も下支え。さらに効果を伸ばすなら蓄電池や運転シフトを検討。

Q2:売電単価が下がると損では?
A:今は買電単価>売電単価が一般的。だからこそ自家消費率UPがカギ。売るより使う設計が合理的。

Q3:冬の発電が少ないのが不安
A:冬は給湯・暖房で需要が増えるので、昼の自家消費価値はむしろ高い。エコキュート昼沸き上げ等で効果が出る。

Q4:メンテ費も入れるべき?
A:はい。点検・清掃は数年で数万円、パワコンは10〜15年で交換20〜40万円想定。長期の実質効果で評価しましょう。

Q5:どの容量がベスト?
A:屋根・契約・生活パターン次第。**「日中の負荷+夜の重要家電」**をどこまで賄いたいか、から逆算が王道。

導入を成功させる3つの設計ポイント

  1. ライフログ化:洗濯・食洗機・給湯の時間帯を1週間メモ。昼シフト余地を見える化

  2. 機器連携:太陽光×蓄電池×エコキュート×EV×HEMSを一体設計。無駄を削る

  3. 将来前提:電気料金上振れ・家族構成の変化・EV導入予定まで見据えて容量を決める

実例まとめ(早見表)

家族像/機器 使用量/年 太陽光 蓄電池 自家消費率 年間節約目安
A:3人 昼不在多い 4,200kWh 5kW なし 35% 約11万円
B:4人 夕夜ピーク 5,400kWh 7kW 10kWh 65% 約20万円
C:5人 オール電化 7,800kWh 10kW 10kWh 70% 約28〜30万円
D:在宅多め 4,800kWh 5kW なし 50% 約12万円

※ 実住環境で±20%程度のブレは普通に出ます。見積り時は個別シミュ必須。

ここまで読んだら、次にやること

  1. 電気明細(12か月分)を用意

  2. 屋根の向き・影・勾配をチェック(図面やGoogleマップでも可)

  3. 「太陽光のみ」「太陽光+蓄電池」2案で試算

  4. 一括見積もりで複数社比較(売電前提ではなく自家消費前提で提案依頼がコツ)

  5. 補助金(自治体・蓄電池)を確認し、回収年数を再計算

まとめ

  • 売電収益が細る時代は、自家消費こそ主役

  • 太陽光のみでも月1万円前後、蓄電池ありなら月1.5〜2.5万円規模の削減が十分射程

  • オール電化・EV・エコキュートとの連携で、設計次第の伸びしろは大きい

  • 本記事の代表値をベースに、あなたの家計実態で個別最適化すれば、投資効果はさらに明確になります

太陽光発電のメリット・デメリットを徹底比較

太陽光発電のメリット

1. 電気代の削減

  • 自宅で発電した電気を使うことで、電力会社からの購入量を減らせる

  • オール電化住宅や家族の人数が多い家庭では効果が特に大きい

  • 余剰電力を蓄電池に貯めると、夜間にも自家消費が可能

2. 売電収入の可能性

  • 余剰電力を電力会社に売ることで収入を得られる

  • FIT(固定価格買取制度)終了後は単価が下がっているが、地域によっては高く買い取るプランも存在

3. 災害時の停電対策

  • 蓄電池と組み合わせることで、停電中も冷蔵庫や照明を維持可能

  • 災害の多い日本においてライフラインを守る大きな安心感になる

4. 環境への貢献

  • CO₂排出を大幅に削減でき、家庭レベルで環境対策が可能

  • 子どもの教育にも役立ち、エコ意識が自然と高まる

5. 資産価値の向上

  • 住宅の付加価値が高まり、売却時に有利になる可能性がある

  • 脱炭素社会に向けた動きが加速する中で、需要が高まる傾向

太陽光発電のデメリット

1. 初期費用の高さ

  • 一般家庭の設置費用は100〜200万円程度

  • 補助金を使っても大きな負担となる場合がある

  • 導入後の回収期間は10年前後が目安

2. 発電量の天候依存

  • 晴天時は大きな発電が可能だが、曇りや雨の日は大幅に低下

  • 地域ごとの日照条件にも大きく左右される

3. FIT制度の縮小

  • かつては高額で売電できたが、現在は売電単価が低下

  • 今後は「売る」より「自家消費」でのメリットが中心になる

4. メンテナンスや劣化の問題

  • 太陽光パネルは20〜30年使用できるが、パワーコンディショナは10〜15年で交換が必要

  • 鳥のフンやホコリで発電効率が落ちるケースもある

5. 設置場所や条件の制約

  • 屋根の形状や方角によっては十分に設置できない

  • マンションなど集合住宅では個別導入が難しい

メリット・デメリット比較表

項目 メリット デメリット
経済性 電気代削減、売電収入 初期費用が高い、回収に時間がかかる
災害時 停電時の電力確保 蓄電池がなければ夜間は使えない
環境面 CO₂削減、エコ意識向上 発電量が天候に左右される
将来性 住宅価値向上、脱炭素社会に対応 FIT縮小で収益性は限定的
維持管理 基本的にメンテナンスは少ない パワコン交換や清掃が必要

導入前に確認すべきポイント

  1. 設置条件:屋根の向き・日当たり・面積を確認

  2. 電気使用量:日中に電気を多く使う家庭ほど効果的

  3. 補助金制度:国や自治体の支援策をチェック

  4. 蓄電池の有無:夜間や停電対策も重視するならセット導入がおすすめ

  5. 回収シミュレーション:導入コストと電気代削減額を比較

まとめ

太陽光発電は「電気代削減」「環境貢献」「災害時の安心」といったメリットが大きい一方で、「初期費用の高さ」「天候依存」「売電収益性の低下」といったデメリットもあります。導入する際には、自宅の条件やライフスタイルを踏まえ、メリットを最大化できるかどうかをシミュレーションすることが大切です。特に蓄電池との組み合わせや補助金の活用によって、効果は大きく変わります。検討の際には複数業者から一括見積もりを取り、最適なプランを比較することをおすすめします。