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太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の仕組みとは?

太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の仕組みとは?

太陽光発電を設置した家庭や企業が得られる「売電収入」は、固定価格買取制度(FIT制度)によって支えられています。
しかし、「FITってそもそも何?」「いつまで適用されるの?」「今から導入してもメリットはあるの?」と疑問に思う人も多いでしょう。
本記事では、FIT制度の基本的な仕組みから最新の買取価格、制度の背景、そして2025年以降の動向まで、初心者にもわかりやすく解説します。

目次

    1. FIT(固定価格買取制度)とは

    FITとは「Feed-in Tariff」の略で、再生可能エネルギーで発電した電力を、国が定めた価格で電力会社が一定期間買い取ることを義務づけた制度です。
    この制度は、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなど再エネ普及を促進する目的で2012年に導入されました。

    制度の目的

    FIT制度の目的は主に以下の3点です。

    • 再生可能エネルギー導入を加速させる

    • 発電事業者の採算を安定させる

    • 国内のエネルギー自給率を高め、環境負荷を軽減する

    特に太陽光発電は、一般家庭でも導入しやすく、FIT制度によって大きく普及が進みました。

    制度の仕組み

    1. 太陽光発電を設置した家庭や企業が発電した電力のうち、使いきれない余剰分を電力会社に売る

    2. 電力会社は、国が定めた固定価格で一定期間買い取る

    3. その費用は「再エネ賦課金」として全国の電気利用者が負担

    このように、FIT制度は社会全体で再エネ導入を支援する仕組みといえます。

    2. FIT制度の歴史と発展

    導入の経緯

    日本では2009年に「余剰電力買取制度」が始まり、主に家庭用太陽光を対象にした制度でした。
    2012年7月に「再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)」が施行され、売電対象が全量買取に拡大。事業用太陽光発電の普及も一気に進みました。

    買取価格の推移

    制度初期(2012年頃)は、住宅用(10kW未満)で1kWhあたり42円という高い買取価格でした。
    その後、太陽光パネルの価格下落と普及拡大を受けて、段階的に下がり、2025年度では住宅用で16円前後が目安となっています。

    年度 住宅用(10kW未満) 事業用(10kW以上)
    2012年 42円 40円
    2015年 33円 29円
    2020年 21円 13円
    2023年 17円 11円
    2025年(予測) 約16円 約10円

    このようにFIT価格は年々減少傾向にありますが、発電コストの低下や蓄電池の普及により「自家消費型」へのシフトが進んでいます。

    3. FIT制度の期間と対象

    買取期間

    FIT制度の買取期間は、発電容量によって異なります。

    • 住宅用(10kW未満):10年間

    • 事業用(10kW以上):20年間

    契約期間中は、設置した年の買取価格が固定され、途中で価格が変わることはありません。

    対象となる発電設備

    FITの対象は、一定の条件を満たす再エネ設備です。太陽光発電では以下の要件があります。

    • 経済産業省への設備認定を受けていること

    • 電力会社と接続契約を結んでいること

    • 国の定める安全・品質基準を満たしていること

    また、家庭用と事業用では制度上の扱いが異なり、家庭用は「余剰電力買取」、事業用は「全量買取」となります。

    4. FIT終了後はどうなる?

    「卒FIT」後の選択肢

    FIT期間が終了した発電設備は「卒FIT」と呼ばれます。
    卒FIT後も、発電した電力は引き続き売ることが可能ですが、価格はFIT時代より低く(およそ8円/kWh前後)なっています。

    卒FIT後の選択肢は以下の通りです。

    1. 新しい買取プラン(自由買取)に切り替える

    2. 蓄電池を導入して「自家消費」メインに切り替える

    3. 電気自動車(EV)と連携して電力を賢く利用する

    特に最近は、売電よりも「自宅で使う」方が経済的メリットが大きくなっており、自家消費+蓄電池活用が主流です。

    FITからFIP制度へ

    2022年以降は、FITに加えて新たに「FIP制度(フィードインプレミアム)」が導入されました。
    これは、発電事業者が市場価格で電気を売る際に、一定のプレミアム(上乗せ金)をもらえる仕組みです。
    FITが“固定価格”だったのに対し、FIPは“市場連動型”で、より自立した電力取引を促しています。

    制度 特徴 対象
    FIT 固定価格で電力会社が買い取る 家庭・小規模発電向け
    FIP 市場価格+プレミアムで販売 事業用・大規模発電向け

    今後はFITからFIPへの移行が進み、発電者がより自由に電力を販売する時代へ移り変わると考えられています。

    5. FIT制度を利用するメリットとデメリット

    メリット

    1. 導入費用の回収がしやすい
       一定期間、安定した売電収入が見込めるため、初期投資を回収しやすくなります。

    2. 導入リスクが低い
       価格が固定されているため、電気の市場変動の影響を受けにくい。

    3. 環境貢献の実感
       再エネ普及を通じて、CO2削減・地球温暖化対策に寄与できます。

    デメリット

    1. 買取価格の低下
       導入当初よりも年々価格が下がっており、今後は「売って儲ける」よりも「使って節約する」方向にシフト。

    2. 期間が限定されている
       10年または20年で終了するため、長期的に考えると新しい仕組み(FIPや自家消費)への切り替えが必要。

    3. 再エネ賦課金の負担増
       制度維持のための費用が電気料金に上乗せされており、全国民で負担している。

    6. FIT制度の今後と2025年以降の動向

    2025年以降は、FITによる高額買取がさらに縮小し、自家消費型・FIP型へ本格的に移行していきます。
    経済産業省も「再エネ主力電源化」を掲げており、FITは“普及を終えた技術”として次のステージに入ったといえます。

    今後の方向性

    • 太陽光+蓄電池+EVの連携が主流に

    • 地域マイクログリッド(分散型電力網)の拡大

    • 自家消費率を上げるためのAI制御・HEMS活用

    つまり、これからの太陽光発電は「売る時代」から「使う時代」へと完全に移行します。
    FIT制度はその橋渡しを担った非常に重要な政策であり、制度を理解することは今後の再エネライフ設計にも役立ちます。

    まとめ

    FIT(固定価格買取制度)は、太陽光発電の普及に大きく貢献した国の支援制度であり、導入した家庭や企業が安心して再エネを始められる仕組みでした。
    現在は買取価格が下がりつつありますが、制度を活用すれば10年間の安定した売電収入が見込め、費用回収の大きな支えとなります。

    これから導入を考えている方は、

    • FIT適用期間と買取価格を確認する

    • 卒FIT後の自家消費・蓄電池運用も見据える

    • 信頼できる業者に一括見積もりを依頼する
      この3つのステップを意識しましょう。

    再エネはもはや一部の家庭だけのものではなく、全国的な生活インフラになりつつあります。
    制度の理解を深め、賢く活用することで、あなたの家庭にも経済的・環境的なメリットが生まれるはずです。